紳士的屑?

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紳士的屑?

 誰でも良かった。何だって良かった。兎にも角にも南河原(みなみがわら)イチカは21の誕生日を迎えるまでに処女を捨てたかった。理由は十年来の幼馴染であり、男友達でもある桜庭祐一から彼氏いない暦イコール年齢を馬鹿されたからである。別に恋愛脳になりたいわけでもなければ結婚願望があるわけでもない。ただそれであのバカにバカにされっぱなしなのは正直腸が煮えくり返る程に腹が立ってしまった。  そんな馬鹿げた単純な理由から、イチカは女遊びが激しく屑でヤリチンだと大学内で言われている足利美濃羽(あしかがみのわ)にターゲットを絞った。  イチカの外見はお世辞にも可愛らしい今どきの女子とは言えない。あまりおしゃれにも興味がないため化粧っ気もなく、よく言えばボーイッシュであり悪く言えば色気のイの字もないような女だった。しかし顔立ちが良いため女子からはモテる。恐らく普通の男よりも。  身長も女としては少々高い168センチ。  対して美濃羽は185センチとタッパはあり、肩まである髪をハーフアップにしているがそれが嫌味でも古臭くもなく似合っている。整った顔立ちはそこいらの芸能人では刃が立たないほどに美しかった。実際芸能界からスカウトもあるらしいが、女遊びが出来なくなるから嫌だというアホな理由により総スルーしているらしい。  なお、性格は先程も述べたように女好き――いや、もはや病的なまでに女に対して依存している男である。遊んだ女は数しれず、捨てた女の数も両手の指では足りないほど。  足利美濃羽が死ぬときは腹上死か、女に刺されるのどちらかだろうと言われている。そういう男だからこそ後腐れなく処女を捨てられるものだとイチカは思った。  ただ問題があるとすれば一体どうやってコンタクトをとるかという事だ。美濃羽とイチカは接点がない。学年は同じだけれど学部は違う。広い大学で偶然を装い出会うのは至難の業だし、仮に出会えたとしてもどうやって話を持っていくか。であれば誰かから紹介でもうけようか、と考えるけれど生憎美濃羽と懇意にしている友人は誰もいなかった。  あれもだめ、これもダメ。そならならばもういっその事、直接アタックをするかとイチカが心に決めるのは存外早く。善は急げと美濃羽のバイト先へと赴いた。 ・・・
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