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勝手に知られている、というのは例えユーリーがミステリアスなイケメンであっても怖いものだ。
それに、もしどこかで会っていて私が忘れているのなら申し訳ないし、とても失礼だろう。
「それに、どうしてあのとき助けてくれたの?」
その理由もまだ分からないままだ。
助けてくれた理由がわかれば、ユーリーが私のことを知っている理由にも繋がる気がする。
ユーリーはようやく魔術書から顔を上げた。
「……君のことが好きだから、って言ったらどうする?」
「え」
薄紫の瞳と目が合う。
ユーリーの瞳の奥に熱が揺らいでいるように感じられて、私は思わず呼吸を止めてしまった。
「……そんなこと、あるわけないでしょ」
なぜだか、緊張して口の中が乾く。
ユーリーが私のことを好きだなんて、ありえないだろう。
私は公爵令嬢として生きてきた。見たところユーリーは身分があるわけでは無さそうだし、社交界での接点も無いだろう。
そうなると、私がユーリーに出会っている理由がない。
出会っていないのに、好かれるわけがない。
「なに、もしかして私のストーカーでもしてたわけ?」
どこかで私を見かけて勝手にストーカーとなっていた、ならまだ納得できる気がして茶化すように言うと、ユーリーはふと考え込んだ。
「……確かにそうかもしれない」
「否定してよ!」
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