3話

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「君が手の届く距離にいると、駄目みたいだ。君を……俺だけのものにしたくなる」 「ユーリー……?」  ユーリーの顔がゆっくりと降りてくる。  薄紫の瞳に囚われて、私は動けない。  ユーリーは長身を屈めると、私の唇に掠めるようなキスを落とした。 「な、なにするの……っ」    触れたのは、ほんの一瞬。  だけど、ひんやりとした唇の感触がまだ残っている気がする。 「……なにって、キスだけど?」 「なんでキスされなきゃいけないのよ」  一体この魔術師は、勝手に何を抱えているというのだろうか。  キスされたことよりも、教えてくれないことが腹立たしい。  ユーリーを睨みあげるが、全く効いていないようでふっと口元だけで笑われた。   「なんでって……君が好きだから?」 「はぁ……?」  私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。  こちらは好かれる理由が分からないというのに。 「もう一度キスしたら、俺の気持ちがわかるかもね」  そう言って、ユーリーは顔を近づけてくる。  ――ひ、ひいいいい! 「さ、さよならっ!」  私はユーリーの手を振り払うと脇をすり抜け、逃げるように部屋を飛び出した。  ◇◇◇◇◇◇  ユーリーにキスされた日から三日。  ひとつ屋根の下で暮らしているというにも関わらず、私とユーリーの間にはなんとなくきまずい空気が流れていた。 「はぁ……」  
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