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4話
「……っん」
がた、ごと、と体が揺れる。
振動と馬のいななきに目が覚めると、私は馬車の中にいた。
即効性の睡眠薬だと聞いていたが、持続性は低いのだろうか。
丸一日寝ていたのでなければ、それほど時間が経っていないと思われた。馬車の窓を流れる景色はまだ夜だ。
起き上がろうとして……、私は自分が動けないことに気がついた。両手両足を縛られてしまっている。幸いと言っていいのか口は封じられていないようだが、薬のせいなのか上手く言葉が発せられなかった。
――どうしよう。もしかして誘拐されてる?
もしかしなくてもそうだろう。
さすがにこれはまずい、と頭の中で警鐘が鳴る。
どうにか打開策はないかと考えを巡らせていると、御者台の方から男たちの話し声が聞こえてきた。
「……にしてもユーリーのヤツめ、こんな町外れにいるなんざ思わなかったよ。組織を壊滅させておいて呑気に過ごしやがって……」
――組織? 壊滅……?
一体男たちはなんの話をしているのだろう。
ユーリーに関わりそうな話だということだけは察してしまい、私は思わず聞き耳を立ててしまった。
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