4話

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「――そういえばこの女、見覚えありません?」 「ああ、あるともさ。多分、五年前にうちの組織が誘拐した貴族の一人じゃねぇか? なんで町外れにいたかは知らねぇが……」 「まぁ、この女をダシにして、ユーリーに復讐できればこっちのモンっすね」  男たちがけたけたと笑っている。  だけれど、それどころではなかった。    ――五年前……? 誘拐……?  聞き捨ててはならない言葉が聞こえた気がする。  なんだか、酷く頭が痛い。心臓がバクバクして、呼吸が苦しくなってきたような……。 「あ? お前なに馬車の上でマッチなんかすろうとしてんだ?」 「だって、俺は運転してないからタバコ吸ってもいいかなって」  御者台の方では、男たちの会話がまだ続いているようだった。  ……マッチ? タバコ?  なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。   「気をつけろよ?」   「分かってますって……あ」 「あ、おいバカ、なんで馬車の上にマッチを落とすんだ! 早く逃げろ!」    ――今、「あ」って言った!? 逃げろ!?  慌てふためいている男たちに、なんだかやっぱり嫌な予感がするのだが……。
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