50人が本棚に入れています
本棚に追加
そうして四度目の婚約破棄が告げられて、なんだか気持ちが冷めてしまった。
――そんなにエレノアが好きなら、もう好きにして。姉と婚約が決まっているのに義妹に手を出すような男、私だって願い下げよ。
「……そうですか」
私はただ一言だけ返した。
エレノアが私を見て、勝ち誇ったようにニヤリと笑う。それを合図に世界がぐるりと回り、暗くなる。
――ああ、やっぱりまただ。
ぐるぐると回る視界の中、私は考える。
――もし、またあの日に戻るなら……次は……。
◇◇◇◇◇◇
「……では、よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。今後ともよろしく頼む」
はっと目を開けると、そこは屋敷の客間だった。
私の隣には、ウィングフィールド公爵家の当主であるお父様。目の前には、ヘンリー様とそのお父上である伯爵様が座っている。
――やっぱりまた戻ってきたみたいね。
このシーンを見るのはこれで五度目になる。
忘れもしない、ヘンリー様との婚約が決まった日だ。
「これからよろしくね。白光の令嬢として名高い君と婚約できるなんて嬉しいよ」
『白光の令嬢』とは、私のことを示すあだ名みたいなものだ。
ホワイトブロンドの髪や肌の白さから、私は社交界で『白光の令嬢』と呼ばれていた。
――何が白光、よ。白光じゃなくて、薄幸の間違いでしょ。
最初のコメントを投稿しよう!