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もうすぐ父親が再婚すること。義妹ができること。当時片思いをしていたヘンリー様のこと。
多分、誘拐された恐怖でおかしくなっていたんだと思う。
突然部屋にやってきた、少し年上で眼鏡をかけた銀髪の少年をやり過ごすための、私なりの対処法だった。
やがて私はユーリーに聞いた。
「あなたはどうしてここにいるの?」と。
「……俺はこの組織に拾われたからここにいる。それだけだよ」
どうでも良さそうにユーリーが答える。
今よりも能天気に生きていた当時の私には、あまり理解できないものだった。
「……ふぅん? お父さんやお母さんの代わりをしてくれているってこと?」
「違う。俺の魔術の力を利用しているだけだ」
当たり前だが、魔術なんてそうそう見られる機会なんてない。
私はユーリーのその言葉に目を輝かせて身を乗り出した。
「あなた魔術が使えるの!? 見てみたいわ!」
はしゃぐ私の様子にため息をついたユーリーは、仕方なさそうに魔法を使ってくれた。
あの、白い花が出る魔法だ。
白い花が、甘い香りと光を放ちながら現れる。
この瞬間こそが、本当に私が初めて魔術をみた瞬間だった。
私はこの時も、ユーリーの魔術に目と心を奪われた。
「すごい! 初めて魔術をみたけど、とっても綺麗! あなたのその力、絶対他のことに使った方がいいわ!」
「他の、こと?」
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