5話

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 私の言葉は思いもよらぬものだったのだろう。ユーリーが目を丸くする。  彼の表情が変わった瞬間だった。 「ええ! もっと素敵なこと! あなたが楽しいと思えることに!」 「……そうか。なら俺は、君のために力を使いたいな」 「え……」    そこからは屋敷に戻るまでは、あまり思い出せなかった。  気づけば私は屋敷に戻っていて、父に泣きながら抱きしめられていた。  新聞では、犯罪者組織が壊滅寸前まで追い詰められ、主犯格のメンバーは捕らえられたと報道がなされていた。  だが、その時の私にはもう、誘拐されたこと自体の記憶がなく、完全に他人事で状態だった。  ◇◇◇◇◇◇  ふっと暗闇から意識が浮上する。  私が目を開けるとそこは、ユーリーの家の食堂だった。それも夜。  ――私、生きてる?  馬車が燃えて、炎に包まれたあの時。  私は確かに死んだと思った。  ユーリーの腕に抱かれて、私は自分の命が消えていくのを確かに感じた。  だけど、今、私は生きている。  体が溶けて消えてなくなりそうなほどの熱さを感じたのだ。  火傷の一つや二つ、それどころか全身に火傷を負っていても不思議ではないのに。  私の体には、傷一つない。  ――やっぱり巻き戻ってる。    そんな馬鹿なと思う自分と、やっぱりと思う自分がいるのを感じる。
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