5話

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 六度目のループ先は今までとは異なり、ヘンリー様との婚約が結ばれた時ではなく、ユーリーの家だなんて。  食堂には私一人しかいない。部屋に置いてある時計を見るに、ユーリーが街へ行ってすぐの時間くらいだろう。  ここまであからさまだと、溜息をつきたくなる。  婚約破棄される度に、今まで私を何度も何度もループさせてきた犯人はユーリーだったというわけだ。  ――ユーリーに会いたい。  私は、おかしい。  あんな、得体の知れない魔術師に会いたいと、こんなにまで強く思うなんて。  ユーリーの顔が見たくてたまらないなんて。  私は一度死んで、なおさら狂ってしまったのかもしれない。    それもこれも、あの男が最期に私を抱きしめたりなんかするから。  あの男が、涙なんて見せるから。    私の脳裏には、私が死ぬ間際に見たユーリーの姿がすっかり焼き付いてしまった。  私を想って泣く、彼の姿が忘れられない。 「ユーリーの馬鹿……!」  私がユーリーを探しに行こうとを部屋を出ようとしたその時。  後ろから不意に抱きしめられた。   「誰が、馬鹿だって?」  耳元から、聞き覚えのある甘い男の声がする。 「……ユーリー……っ!?」  一体いつ現れたのだろう。  この部屋には誰もいなかったはずだ。  だが、そんなこと問うだけ無駄であろうことは分かっていた。
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