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「だから俺は……自分の寿命を対価に、君が幸せになれるまで時間を巻き戻すつもりだった」
なんて、優しいんだろう。
なんて、悲しい人なんだろう。
「ユーリー……」
「それなのに、今回君がおかしなことをするものだから、様子を見に行ったらこれだ」
おかしなこと、とは私が婚約破棄される前に婚約破棄したことだろうか。
男たちに森で襲われていたとき、タイミングよくユーリーが助けに来てくれたことにようやく合点が行く。
「ずっと我慢していたのに、どうしてくれるんだ? 君とこんなに近くで過ごしてしまったら、返したくなくなってしまうじゃないか」
私の腰に回されたユーリーの腕に、力が込められた気がした。
悲しそうに話すユーリーに、私まで余計に泣きたくなる。
だけど、私にはどうしても言いたいことがあった。
「あなた……ほんとにばっかじゃないの!?」
この魔術師は、優しくて悲しくて、そして何より大馬鹿者だ。
「そんなこと、いつ私が頼んだのよ! 私の幸せは私が決めるわ!」
私がそう言うと、ユーリーはぽかんとしていた。
「あなたが綺麗な人間かどうかなんてどうでもいい。私はあなたのことが好きで、一緒にいたいし……あなたの魔法にずっと惹かれているのよ! だから――っ!?」
まだまだ言い募ろうとした唇は、柔らかなものに塞がれた。
ユーリーの唇だ。
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