6話(最終話)

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 舌先が私の唇をなぞってくる。  そのくすぐったさに思わず緩んでしまった隙に、口付けを深められた。 「……っちょ、んん……っ」 「……俺をそんなに煽っていいのかい? もう返せないよ?」  唇が離された瞬間、間近で囁かれる。ユーリーの吐息が唇にかかってぞわりとした。  なんだか甘い花のような香りがする気がして、酔ってしまったかのようにくらくらする。 「そんなの……っ」  ユーリーは私の言葉を塞ぐように、何度も繰り返し口付けてきた。  まるで私からの言葉を聞きたくないかのようだ。  彼はきっと、私が「やめて」と言ったらその通りにするのだろう。そうしてきっと、私の知らないところで私のために勝手に何かして、私の知らないところで朽ち果てるに違いない。  ――そんなのは許さない。   「返さないでいいわ」  どの道、私はもう公爵家に戻るつもりなんかない。  私はもうとっくに、この魔術師に捕まってしまっているのだ。 「じゃあ、旅に出ようか。世界一周なんてどうだい?」 「それは楽しそうね」  私はユーリーの言葉に賛成した。  ここにこのままいたところで、ユーリーを追っているであろう犯行グループの生き残りが来るだろう。  逃げた方が懸命だ。 「君は、魔術師に捕まった可哀想な子だ」  ユーリーが泣きそうな、だけれど幸せそうに顔をゆがめて、私を抱えあげた。
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