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この結婚の意味なんてわかっている。
だけれど私はもう、ヘンリー様との結婚にうんざりしているし、エレノアにもお義母様にもお父様にも嫌気がさしていた。
――なにより、もうループするのは嫌だ。
怒鳴る父を尻目に、私はソファーから立ち上がった。
「勘当でも好きになさってくださいな。私はこの家を出ていきます」
呆気に取られている三人を放置して、私は急ぎ足で自室に向かった。
◇◇◇◇◇◇
――ああ、やっと解放された! そもそもの婚約がなければループなんてしないでしょ!
すぐさま家出の準備を整えた私は、開放的な気分でトランク片手に森を歩いていた。
とりあえずの目的地は、森を抜けた先にある町だ。
今の私は、必要最低限のものと、お金になりそうな宝石数個しかもっていない。
町に着いたら宿と、それから仕事を見つけよう。
私は令嬢ではなく、ただのフェリシアとして生きていく。
と、私が決意を固めていると……。
「ああ? なんでこんなところにこんな身なりのいい女がいるんだぁ?」
柄の悪そうな男たちと遭遇した。
一応持っていた中で一番簡素なワンピースを身につけたつもりだが、(元)お嬢様であることが見抜かれてしまったらしい。
私の姿を上から下まで眺め、男たちは顔を見合わせる。
「どっかの令嬢か?」
「売ったら金になりそうだな」
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