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「待て、こんな綺麗な女、見かけること滅多にねぇぞ。先に俺たちで楽しんでもいいんじゃねぇか?」
――あ、終わった。
話し合う男たちに、私の顔から血の気が引いていく。
――に、逃げなきゃ。
筋骨隆々な男性たちは、にたにたと気持ちの悪い笑みを浮かべながらこちらへ近づいてくる。
だっと駆け出したものの、女の足だ。男たちにすぐに追いつかれてしまった。
男の1人がぐっと私の腕を掴むと、そのまま私を地面へと引き倒した。他の男たちも、私の方へと近寄ってくる。
「残念だったな、お嬢ちゃん」
「離して!」
私はどうにか男の手から逃れようと、じたばたと暴れた、のだが。
「……っううッ!」
突然目の前の男が、喉を掻きむしり苦しみ始めた。
――え?
「な、なんだ……ッ?」
「わかんねぇ……、ただ苦しい……ッ」
他の男たちも、皆喉元を押さえて苦しそうにしている。
わけが分からないまま男たちから距離をとると、私と男たちのちょうど真ん中でふわりと風が起きた。
「俺のフェルに手を出そうとしてるのは誰だい?」
風の中から、低く、そして甘い男の声が聞こえる。
目の前の風が緩やかにやんで、私の前に姿を現したのは、銀の長髪が美しい長身の男だった。
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