2話

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 その場に残されたのは、私と魔術師だけ。  男たちが走り去るのを見送ると、魔術師は私の方へ向き直った。 「あ、あの……」 「君、どうしてこんなところにいるのさ?」 「どうしてと言われても」  私はこの男性と初対面のはずだ。  なのに、どうしてそんなことを言われないといけないのだろう。  ――本当に初対面?  ふと、思い出す。  先程この魔術師は、私の名前を呼んだ。しかも親しい間柄でしか呼ぶことしかない私の愛称『フェル』と。 「あなたこそ、誰? どうして助けてくれたの?」  私が聞くと、魔術師は酷く困ったように顔をしかめた。  何かを言おうとして口を開きかけ、一旦閉じる。 「……俺はユーリー。ただの魔術師だよ」 「ユーリー……」  名前を繰り返してみるが、やはり私の知り合いではないはずだ。名前に心当たりがない。 「ほら、これをあげるから帰りな。婚約者殿が待っているだろう?」  ――なんで私の事情を知ってるのよ。  ユーリーは私の手を掴むと、くるりと手のひらを上向けさせた。  そこにユーリーが手をかざすと、光とともに手のひらサイズの白い花が現れる。その美しい光景に、私は目を……心を、奪われてしまった。  ――魔法って、こんなにきれいなの? 「お守りだ。家に着くまで、君のことを守ってくれるだろう」   「家には帰らないわ。婚約は破棄したし、私はもう公爵令嬢じゃないの」
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