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◇◇◇◇◇◇
そうして、私とユーリーの共同生活が始まって一週間。
――思ったより普通だわ。
ユーリーは町外れの小さな一軒家に住んでいた。空き部屋があるとのことで、私はそこを使わせてもらうことになった。
どうやらユーリーは魔術の研究をしているらしい。日がな本を読んだり、庭で術を使ったりして過ごしているようだった。
たまに街の人が訪れて依頼を受けたりもしているらしい。
私はというものの、ユーリーから薬草の調合について教えてもらっていた。
「ねぇ、ユーリー」
ごりごりとすり鉢で薬草をすり潰しながら、目の前で魔術書を読むユーリーに声をかけた。
「この薬草ってなんの効果があるの?」
潰せば潰すほど甘い香りがしてくる。
とりあえず言われた通りにすり潰しているが、まだ何を作っているのかは聞いていなかった。
「その草と水を混ぜて煮れば、即効性の睡眠薬になるんだよ。不眠症の患者がいるから欲しいっていう依頼さ」
「へぇー……」
なるほど。街の人から依頼だったのか。
「ねぇ、もう一つ聞きたいんだけど」
「今度はなんだい」
「いい加減教えてよ。ユーリーはどうして私のことを知ってるの?」
もう、何度目かの質問だ。
何度聞いても、適当にかわされて終わる。
それでも尋ねずにはいられなかった。
「またその質問か……。別にいいだろう、俺が君のことを知っていても」
「良くないわよ」
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