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「ごめん。吉田。これは、駄目なやつ」
「いや、こっちこそ。歌の練習してて」
「カラオケ?」
「んんっ、ま、まぁ、そんなとこ」
吉田は言い辛そうに顔を背けた。いつもは偉そうに教えてくる吉田にマウントを取ってもいいかもしれない。
「お詫びにちょっとだけ、コツ、教えたげる」
*
「♪あーーーーーーーーー」
「♪あー......あーーーーー」
「違うよ。ロングトーンは息の量一定にして」
私はパパから昔教わった練習法を吉田に伝えた。案外、付いてくる。私は思わず聞いた。
「なんで歌の練習をしてるの」
「気持ちを伝えたくて。その、感謝とか御礼とか」
(ふーん、一途なとこあるじゃん)
「俺が辛いときに支えてくれた人に、ありがとうって伝えたいんだ。少しでも近い所で、近い方法で、届けたい」
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