第七皇子のしあわせ

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 セイソウのことは、ぼくにはわかりません。  ただわかるのは、ぼくはフツゴウだということです。  ぼくはだれかにフツゴウなのです。ですからいてはいけないのです。  ですからぼくはこちらに住まうことになりました。  来たのはぼくが2さいのときと言います。  来たときのことはよくおぼえていませんが いらい、ここがぼくのいえなのです。  「きたのとう」と、そとのせかいの人はよぶようです。  とうは、たしかにとうなのです。  そこにはぐるりとめぐりかいだんがあり、  どこまでものぼっていけるのです。あるいはどこまでも、下りていけます。  とうのかいだんは、ぼくの庭です。  ここにはおわりないだんがあります。えいえんのだんです。  ぼくはこの上り下りするえいえんのにわのけしきが好きでした。  色はあまり、ここにはありません。おそらく、はいいろがあるだけでしょう。  けれどぼくには見えるのです。  はいいろの中にもいくせんのちがったはいいろがあるのです。  とうにふりこむ光の下で、  ぼくはそのいくせんものはいいろと、日がくれるまであそびました。  そこにはいくつものおうこくがありました。そこにはいくつものていこくがありました。  そこには森がありました。そこにはすべてのものがたりがありました。  どれもがえいえんのものがたりです。ですからぼくは、目がさめているときは、  そのえいえんのめぐりかいだんをのぼりおりして、なんじかんでもなんじかんでも、  むげんのはいいろの中にひたってあそんだのです。そこにはすべてがありました。そこにはせかいがありました。
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