第七皇子のしあわせ

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 いらい、ぼくにゆるされた場所は、2つの石の部屋でした。  そこは塔の上そうにありました。  窓が1つ、ありました。こうしがはまって、顔を外に出すことはかないません。  しかし。窓の外には空がありました。そして、空の下には広い森がありました。  その先には都市もありました。夜には都市は光にみちました。  それはまさに、地の上の星空そのものでした。  ぼくは光に見とれました。毎夜どれだけ見とれても、光はあまりにかがやいており、  ぼくは一夜も、目をはなすことができません。  そして雨の日には、がんかの森は雨の色に沈みます。その色は日ごとにちがっていました。  めぐり階段のいくせんもの灰色になれていたぼくの目には、  そこに広がる雨ふりの森の色は、あまりにもぜいたくなものでした。見つめるごとに涙がいつも、とまらなかったのです。ぼくはしゅくふくされているのだと、心から世界にかんしゃしました。世界はこれほどまでに美しいのです。その美しいすべての色を、ぼくだけのために、毎日小窓をとおして届けて見せてくれるのです。  これよりうれしいことが、他に何かあるのでしょうか。ぼくにはそうぞうできません。
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