君の好きな人は、私の友だち。……だったはず。

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「…おい。話聞いてる?」 帰り道、和田と一緒に帰る。家が隣だから。 「え、聞いてなかった。」 「えー。」 明らかにムッとされた。 「何?なんの相談だった?恋の悩み?」 「別にいい。相談じゃないし。恋じゃねーし。」 「えー、すねんな。和田。」 肘で突くと、ブレザーのポケットから二つ折りにしたチケットを渡された。 チケットって普通、二つ折りにしなくない? 「杉野。ライブ行ったことある?」 「ない。」 「行こや。暇っしょ。」 「え。」 「このバンド、最近ハマって。って、いう話をしてたんだけど今。」 チケットをじっと見た。 私は音楽に疎くて、バンドのグループなんて全然知らない。 「杉野、あんま興味ない感じ?」 「え、でも。和田が好きなら行くよ。お金いくら?」 「お金はいい。兄ちゃんが一緒に行くはずだったけど行けなくなったから誰かと行けって。お金は兄ちゃん持ち。」 「え、なんか悪いよ。」 「いいの。杉野だし。」 「じゃ、今度お礼にお菓子持ってくわ。」 「じゃ、決まりな。」 「うん。」 あー。なんかいい。このノリ。 バンドの名前が……えっと? “不時着眼鏡と皺加工 『曇りも晴れもそんなに変わらないツアー2024』” 「え待って。何系なの?」 「ん?あー。」 和田からエアドロで何か送られてきた。 スマホをいじると音楽が追加されてる。 「……“曇り止め”…。何これ?」 「アルバム。聞いといて。ライブまでに予習な。」 予習って。 「俺が1番好きなのは、7曲目。」 「へー。」 「うん。」 和田はスマホをポケットにしまうと、何やら鼻歌を歌い始めた。 和田とは、小さい頃から本当によく遊んでいた。 公園の砂場で山を作りながら、鼻歌を歌っていた小学生の和田を思い出す。 山にトンネルを掘っている時はいつも上機嫌だった。私が反対側からも掘るとニコニコ笑って、鼻歌もリズミカルになっていった。 「ね、和田どっか寄ってく?」 「じゃあ、カラオケは?」 「いいねっ。行こ行こ。」
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