君の好きな人は、私の友だち。……だったはず。

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「杉野、逸れないように手繋いどこう。」 和田に差し出された左手を右手で受け取った。 ライブ会場は、地元の音楽ホールだった。300人しか入らないけど、一応、1階席と2階席があって、私たちは1階席の真ん中の島の最前列、ど真ん中の席だった。ファンの人には申し訳ないくらいの神席。 「ちゃんと予習した?」 音源を受け取ってからきょうまで聴ける時はずっと聞いてた。わずか3日間だったけど。 私はメロディも歌詞も完全制覇。 「したよ。ハマってずっと聞いてた。」 「やっぱ、杉野で良かった。」 今は物販に並んでいる。和田とツアーグッズのアクキーとタオルはぜったい欲しいねって、ここにくる時電車の中で話していたから。 「和田和田。」 「ん?」 「Tシャツも可愛い。」 「買う?」 「買うー。」 私もこの3日で、“不時着眼鏡と皺加工”に染まりかけているのだ。
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