無罪の掟

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 俺、エドワード・マルティネスは不幸だ。  十七年前に生を受けてからというもの、一度もツイてると思ったことがないから、世界一の不幸者と自認している。  なんせ親の顔を知らない。物心つく前から教会で育ったもんだから、シスターの婆や神父の爺には口うるさく育てられたもんだ。  たまにそこを訪れる、教会の経営者とかいう見知らぬオッサンやネーチャンと話をするのは面白かったので真面目にしていたが、それ以外はとことん飽き飽きしていた。  こんなところからサッサと出たい。ガキの頃は本当にそれだけを考えて生きていた。ある程度成長してからは、殆ど教会には帰らなくなり、己の力一つだけで生きてきた。  だからなのかどうかは知らないが、俺は裁判所にいた。  なんでも第一級殺人犯として起訴されているからだそうだ。勿論身に覚えなんてものはない。俺がやる犯罪など、せいぜいかっぱらいや万引きくらいだ。殺しなんて割に合わない仕事、するはずもない。だが、裁判所の連中はそんな俺を信用することもなく、無情にも有罪判決を宣告しやがった。  死刑判決。  こうして俺の十七年の人生はあっけなく幕をおろそうとしていたのだった。
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