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最奥に到達したアベルがため息をつく。
「君が僕のものになるまで、ずっとこうしていようか」
内部の感触を楽しむように、アベルがゆっくりと動き出す。
惨めな形で奪われているというのに、何度目かの交わりは確実に快楽をもたらし、混乱していた。
「こんなのいや、怖い」
「君はなんでも怖がるね」
責めるように、結合がいっそう深まった。
「あ、やめて、壊れる」
「壊してるんだよ。ローザ」
激しく突かれると、また別の感覚が生まれてくる。
のぼりつめたローザをアベルが満足そうに見つめた。やがて、アベルの欲もはじけたようで、体内が熱いもので満たされた。
目隠しを外され、顔をあげるとアベルの悲しげな瞳が目に入る。
散々ひどくしたあと、時々こういった表情をする。
まるで傷つけたのはローザのほうだと言わんばかりに。
この乱暴で利己的な求愛を責める気持ちが、ローザの中で小さくなる。
「どうしてこんなことをするの?」
意外なことを聞かれたかのように目を見開いたアベルが、幼い子を諭すように答える。
「なぜって? わからないの。君が欲しいから。愛しているからだよ」
その言葉は、なぜか悲しみを帯びている。
「違う。愛はこんなふうに奪うものじゃないわ」
「ならば君の言う愛を教えてよ。僕でない誰かにならば、君も正しい愛を与えられるのかい」
この狂気めいた行為が愛ゆえなのか、それともただのエゴなのか、アベル自身にもわからないに違いない。
おそらく、その二つに明確な境界線など存在しない。
外で吹き荒れる暴風は止むことなく、不吉な音に怯えながら、ローザはじっとアベルの目を見た。
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