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だから盗むなと言ったのに。
「お前、何回同じ馬鹿を繰り返せば気が済むんだ?」
「…………」
ここは取調室。
警察官の僕の目の前にいるのは、むすっとした顔の太った中年男。彼にはある容疑がかけられていた。――近所のあるアパートから、下着を盗んだ疑いである。その部屋には、若くて綺麗な女子大生が住んでいた。近所で彼女を見かけたからなのか、あるいは干されている下着が魅力的だったからなのか。こいつはベランダから侵入し、パンティーを盗んでしまったのである。
何がやばいってこの男、既に前科があるということ。しかも同じく下着ドロ。一回刑務所につっこまれたのに、何で反省しないのだろう。
「……俺は、やってねえ」
男はそっぽを向いて否認。
「盗んだってなら、ブツはどこにあるってんだ」
「前回の時もそうだったが、お前は女性の下着を身に着けるのが大好きなんだろ。だから今も履いてる、違うか?」
「俺が女物着るのが好きなだけだ。これは俺のもんだ。ここで脱がして確認するつもりか?」
こんの変態。
僕はこめかみに青筋を立てた。単なる下着ドロだけでも許しがたいのに、こいつときたら盗んだ下着を履いて出かけるのが趣味ときている。今までどれほどの女性達が、こいつの趣味に吐き気を催し、そして傷ついてきたことか。
現時点では、立件は難しい。そもそもまだ重要参考人の段階である。いくらなんでも、本人が現在履いてるパンツを強引に脱がせて調査するわけにもいかない。
仕方ない。黙っておいてやろうと思っていたが、切り札を切るしかない。こちらの堪忍袋の緒も切れそうなのだ。
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