きつねのお面

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きつねのお面

感動のもふもふな出会いを果たしつつも、お義母さまが早速とばかりに中に案内してくれる。 「さぁ、こちらよ。ビアンカちゃん」 お義母さまに続いて公爵邸の中を進んでいけば、現在双子ちゃんのリタくんとリコちゃんは仲良くお手手を繋いでとてとてとふたりで歩いている。 歩いているだけで……尊い。 「ここで旦那と長男のロイが待っているわ」 到着したのは応接間と思われし部屋の扉の前。どうやら、私の結婚相手はロイさまと言うらしい。メモメモ。しっかり覚えたぞ。あぁ、双子ちゃんかわゆす。あぁ、いかんいかん。集中せねば。何事も、第一印象は大事よね! そして応接間の扉が開かれる。その、ソファーにはふたりの男性が腰掛けている。……が。 何故お面をつけてんだ!?しかも前世でよく見たきつね面みたいなのつけてるんだけども!?え、なにこれ、ここ、何かヤバい家!?いや、でもロバート兄さまのお墨付きだし、お義母さまやアルくん、リタくん、リコちゃんはいいひとそうだしかわいいし。でも、何故このふたりだけ?それに明らかにきつね面の耳の影から、黒いくま耳が覗いているし!えっと、その。ふたりは確実にくま獣人では!?この家ではくま獣人はきつね面をつけるのか!? いや、でもリコちゃんはつけてないし……一体どういうこと? ぽかーんとしていれば、お義母さまにふたりの正面のソファーに座るよう案内される。そして私の左右には。 きゃ――――っっ!リコちゃんとリタくんをすちゃっと座らせてくれる。お、おおおおお義母さま!何とすばらしいサービスをおおおぉぉぉっっ!! そしてお義母さま自らお茶を淹れて私やきつね面の旦那さま……公爵閣下とロイさまに出してくれる。アルくんは双子ちゃんにジュースを出してあげていた。 「ガイさま、ビアンカちゃんがね、くま獣人かわいいって言ってくれたのよ?」 お義母さまがきつね面の公爵閣下にそう告げれば、 「そ、そうなのか」 何だかもじもじしながら公爵閣下が答える。 公爵閣下のお名前はガイさまね。うん、覚えたわ。 「だ、だがまだ、慣れるまでは、だな」 「あらあら、大丈夫だと思うけど~~」 慣れるって、何に?こてんと首を傾げていれば、 「じゅーすー」 リコちゃんがジュースをおねだりしてくれたので、テーブルの上のジュースをとってあげる。 「ありがと、おねーたん!」 がはっ。かわいすぎるんですけどっ! 「どういたしまして!」 わぁ、いい子いい子~~。頭なでなでしてあげる~~。 逆隣りでは、リタくんがアルくんにジュースをとってもらっており、こちらもごくごくと飲んでいる。ふたりともかわいすぎだよぉ~~。 「ほら、自己紹介しなくちゃ」 と、お義母さまが告げれば。 「え、えぇと、び、ビアンカちゃん。だったな」 公爵閣下が緊張しがちに口を開く。 「わ、私がアロニア公爵だ。どうぞ、お義父さまと呼んで……くれたら嬉しい」 それはその、ありがたいのだけども。お面、とらないのかな? 「お、お義父さま」 試しに呼んでみれば。 「あ、あぁっ!ど、どうしよう!本当に呼んでもらえるなんて、ぐはっ」 何か、とっても喜んでもらえたみたい。お義父さまはお義母さまにぎゅっと抱き着いてすりすりしていた。そしてお義母さまはお義父さまの頭をなでなでしており、仲の良い夫婦みたいで何だか和むわぁー。お義父さま、相変わらずお面のままお義母さまにすりすりしてるけど。 そしてその際にちらりと見えた、お義父さまのくまちゃんしっぽは……めっちゃまんまるふわもふだったっ! ――――と、言うことは私の旦那さまのロイさまも? 緊張しがちにロイさまの方を見つめれば、一瞬目が合ったようで、思わずドキっとしてしまった。 「長男の……ロイです」 お面で若干声がくぐもっているようだけど、何だかイイ感じの低音ボイス。私の好みかも。 「さぁ、ロイとビアンカちゃんの婚姻の手続きはちゃちゃっと済ませちゃうから!今日からもう家族として、過ごしていいわよ!」 と、お義母さまが仰ってくださる。そこら辺の外堀は、こちらでもちゃちゃっと埋めていただけるようだ。これで無理矢理祖国から呼び出されることもないだろう。ふぅ~。なんだかんだで受け入れられて良かったぁ。 ――――相変わらずロイさまとお義父さまがお面を外さないのは、謎だけれど。
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