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綱?引き
今日は年に一度の運動会。
最近は春に行う学校も多い。
真の学校も運動会は春だ。
今年入学した真は運動会をとっても楽しみにしていた。
この小学校の運動会の綱引きは周りの学校の綱引きとはちょっと、ううん。大分違っているという話を先生から聞いていたからだ。
練習は見せてもらえなかった。綱引きは先生方と保護者しかやらないのだ。
そもそも、練習を行うのかもわからない。だって、保護者って普段はお仕事してるもんね。
そして運動会の日はやってきた。
いいお天気だ。
誠たちのクラスもかけっこやクラスの競技を保護者や先生の前で見せる事が出来た。
いよいよ、最後の競技の綱引きだ。
でも、幼稚園の時に見ていた綱と何かが違う。
紅組の綱と白組の綱の間も、綱のように見えるけど、綱引きの綱よりも少し細い。でも、綱引きの綱みたいに布でくるまれて捻じってある。
『よ~い・・はじめ‼』
ちょっと年を取った先生方は掛け声をかけるべく、綱の一番後ろについて、赤と白の旗を持って応援だ。
「よいしょ。よいしょ・・・・」
あれれれれ??
真の見ている前で、綱がどんどんと伸びていく。
ようやく綱の真ん中にあったものの正体がわかった。
布で巻いて捩って綱のように見えるけど、あれはゴムの束なんだ。
紅組と白組の先頭の保護者はみるみる離れていく。
真ん中の旗は真ん中のまま動いていない。
引っ張る力はどんどん強くなり、綱はどんどん伸びる伸びる。
これって、どうなったら勝ち負けがわかるんだろ?
3年生のお兄ちゃんの席に行って、
「ねぇ、これって、どうなれば勝ちなの?」
と聞くと、お兄ちゃんは
「見てればわかるさ。最後が一番面白いんだ。自分の席に戻ってよく見てな。」
そう言われて、自分の席まで戻って、みていると紅組も白組もグラウンドの隅まで届いている。
真ん中のゴムは細く細くなって切れそうだ。
その時!
「あぁ!もうだめだ!」
紅組の応援をしていた校長先生が大きな声を出した。
紅組の先生と保護者は引っ張る力がなくなり、一斉に手を放した。
ゴムはあっという間に縮んで、後ろに着いた太い縄ごと白組の先頭の保護者に当たった。
『バッチ~ン』
すごい音がして、白組の先頭の保護者は吹っ飛んだ。その勢いで、白組の保護者と先生は後ろに飛んで行った。
どうりで、グラウンドの端と端に高跳びの時のマットが厳重に取り付けられているわけだ。
これがこの小学校の綱引きだった。
負けたのは赤組だけれども、痛い思いをするのは勝った白組だ。
真は音に驚いたけれど、涙が出るほど笑い転げた。
なんだか昔のテレビ番組を放送していた時のゴムパッチンっていうのと似ているなぁと思った。
どうりで大人しかやらないはずだ。
これを子供がやったら苦情が来るのは目に見えている。
でも、大人たちもみんなでゲラゲラ笑っている。
大人もたまにはこういう馬鹿らしい事をやってみたくなるんだなぁって誠は思った。
真ん中のゴムは切れると危ないから毎年取り換えるんだって。
それに、子供が触らない様に運動会が終ると、綺麗にお掃除されて校長室にしまわれているんだって。
そんなことしなくなって、真たち子供はそんなに危ないあそびはしないのに。
大人って、案外しょうもないな。と真は思う。
でも、また来年の運動会で大人たちがひっくり返るのを見たくてワクワクするのだった。
【了】
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