私と亮

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 せっかくだから露天風呂にも入ろうという事になり、私たちは二月の外気に『寒い寒い』と言いながら、逃げ込むように浴槽に入った。 『ラブホでも、露天風呂って贅沢だね』 『いつか本物の温泉に行くのもアリだな……』  亮はそんな事を言っていて、『確かに温泉は一年中行きたいかも……』と考える。 『夕貴、付き合ってくれてありがとな』  改まって言われ、ちょっと照れくさくなる。 『……別に。お互い、利害が一致する〝練習〟だし』  結局、私は色んなやましさをその言葉で誤魔化している。 『……あの子はいいの? 何回かうちに勉強しに来た、綺麗な子。……高瀬(たかせ)奈々(なな)ちゃんだっけ』 『別に、フツーの友達だけど。恋愛相談も受けてるし、あいつが好きなのは俺じゃないよ』 『……そう』 (なんで今になって彼女の事を思いだしたんだろう)  溜め息をついて髪を掻き上げると、亮がこちらをガン見しているのに気づいた。 『……な、なに』 『夕貴って美人だよな』 『~~~~っ、からかわないで』  自分の顔が十人並みなのは分かっているし、褒められ慣れていないから、怒ったような口調になってしまう。  言ったあと、すぐに『こんな言い方しなくてもいいのに』と後悔するまでが、いつものワンセットだ。 『おまけに胸もデカい。それにいい体してる』 『それが目当てなんでしょ』  ムスッとして言いながら、私は両手で胸元を隠す。 『魅力的だって言ってるんだよ』  亮は私の肩を少し押したかと思うと、熱の籠もった目で見つめ、キスをしてきた。  ジェットバスの泡がボコボコと立つ音と、歌舞伎町の喧噪を耳にしながら、私たちはトロトロと舌を舐め合っていやらしいキスをする。 『……駄目だ。もう我慢できない』  唇を離した亮は、情欲を瞳の奥に宿し、荒々しい溜め息をついた。  初体験は悪くなかったと思う。  それまでに亮には指や舌で愛撫されていて、その行為自体には少し慣れつつあったし、達く事を覚えた。  大きなベッドに横たわった私はいつものように亮にとろかされ、甘ったるい声を上げる。  ラブホにいるからか、亮は私に大きな声を上げさせたがった。  絶頂させてもまだ足りないと言わんばかりに責め立て、前戯が終わる頃には私は何度も潮を噴いて達し、ぐったりとしてしまっていた。 『ちょっと……、待って』  いざ挿入という時、亮はバッグから避妊具の箱を出す。  それまで見ないように心がけていたけれど、私は彼が大きな屹立にゴムを被せるところを、まじまじと見てしまっていた。 『……エッチ』  亮は私の視線に気づき、ニヤリと笑う。 『見たいなら見れば?』  そう言って彼は私の顔を跨ぎ、反り返った剛直を見せつけてきた。 (わぁ……)  男性の平均的なサイズはよく分からないけれど、彼は大きい……と思う。  引き締まった腹筋の下、肌の色よりちょっとピンクがかった男根が、斜めにニュッと生えている。形として、ちょっと格好いいかも。  竿には血管が浮いていて、亀頭と竿の間にはくっきりとした段差ができていた。  自分にはない器官だから、私は羞恥も忘れてかなり……、ガン見してしまっていた。 『ヤバイ。夕貴に見られてるだけで達きそう』  けど、亮が呟いたのを聞いて、ハッと自分が痴女行為をしてしまっていた事に気づいた。 『ご、ごめん! 珍しくてつい!』 『別に、夕貴のだから、どれだけ見ててもいいよ』 『私のじゃないし』  彼の言っている言葉の意味が分からず、とりあえずそう言い返しておく。 『たっぷりほぐしたつもりだけど、痛かったら言って』 『うん……』  そのあと、亮はゆっくり私の中に屹立を埋めていった。
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