災いを回避するために

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 するとすぐに既読がついたので、続けてメッセージを送っていく。 【今日、お店で話していた高瀬奈々ちゃんの事、あったでしょ?】 【ああ、何か聞けた?】 【それが……、思っていたよりずっと複雑な話で……】  そこまで打って、どう説明したらいいか分からなくなる。 【その女、亮くんに粘着してるだろ。それで、亮くんが好きな夕貴に憎しみを向けてる】 【…………うん。会ってないのによく分かるね】  ズバリと言い当てられ、ドキッと胸が高鳴る。 【お決まりのパターンだよ。話を聞くに、亮くんは高学歴のイケメンスパダリだ。どんな女だって狙うに決まってるし、学生時代の彼をとても好きだった女がいてもおかしくない。彼が大学を卒業した直後じゃなくて、二年後の今になって、どうして彼じゃなくて夕貴の前に現れたか。なぜなら亮くんの前に現れない理由がある。夕貴の前に現れたぐらいなら、かなりのストーカー気質。そんな女なら何かやらかしてるに決まってる。なら亮くんに『近づくな』と言われている可能性が高い】  私はスラスラと推理する秀弥さんのメッセージを見て、目を丸くする。 【おおかた、亮くんに嫌われるような事をして、夕貴を逆恨みしてる。なぜなら、夕貴は彼の好きな相手だからだ】 【奈々ちゃん、志保に私たち姉弟と親しいふりをして近づいて、秀弥さんとの結婚の事とか知ったみたい】 【相当だな。しばらく身の回りに気をつけておいたほうがいい。亮くんが側にいるから大丈夫とは思うけど、心配ならうちに来るか?】 【……どうしよう】  確かに危機感はあるものの、そこまでするべき事なのか……とも思ってしまう。 【もう少ししたら結婚するし、同棲するのに荷物を纏めるのが面倒なのは分かる。ただ亮くんと夕貴は、同じ家に住んでいても勤めている会社は別だ。通勤時は夕貴一人になるから、そこがちょっと心配になる】 【確かに……】  納得しながらも、私はいまだに少し迷っていた。 【女の嫉妬は女に向かうよ。そして高瀬って女は、恋敵である夕貴が幸せになるのを許せないでいる。今日、東京駅で話しかけられたのも、会社から出たあとつけられていたからだ。このまま放っておくと何が起こるか分からない。…………頼む】  秀弥さんに言われ、私は頷いた。 【分かった】 【これから荷物纏められる? 用意ができたら迎えに行く】 【ありがとう。親に話してから準備するね。ちょっと遅くなるかも】 【何時でもいい。連絡待ってる】  秀弥さんに【ありがとう!】とスタンプを送ったあと、私は溜め息をついて三階に向かった。 「お父さん、お母さん」  リビングに向かうと、両親はいつものように仲良くソファに座り、テレビを見ていた。 「どうしたの? 夕貴ちゃん」  母が言い、私は一人掛けのソファに座ってから言う。 「急な話なんだけど、今から秀弥さんの家に行っていい?」 「え?」  両親は目を見開き、訳が分からないという顔をする。 「今日、一緒にお食事してきたんじゃないの? 遅い時間だけど、西崎さんがいいって言うならお邪魔してもいいと思うけど」  母に言われ、私は首を横に振る。 「正式に挨拶する前で本当に悪いんだけど、急遽、今日からしばらく秀弥さんの家で寝泊まりしたいと思ってる」 「ええ?」 「どうしたんだ、急に」  両親は困惑した顔をし、私は話を大きくぼかして説明する。 「今まで言っていなかったんだけど、私の事を狙っているストーカーがいるみたいなの。自宅も知られていて、身の危険を感じるから、秀弥さんの所に行けば通勤も一緒にできるし、安全かなって」  ストーカーと聞き、たちまち両親の表情が曇っていく。 「夕貴ちゃん、詳細を話して」  父に言われたけれど、相手が奈々ちゃんだと言わないほうがいい気がした。  亮の友達だし、両親は勿論彼女を知っている。  彼女だと知れば「なぜ?」となるし、そうすれば亮が隠していた過去に繋がってしまう。  だから、私に執着している男性という事にした。
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