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第十一話 桜の邂逅(後) side.和仁
桜花組次期組長と染井一家の娘。
敵対する関係でありながら、俺と美桜は仲を深めていた。
無論この関係は誰にも言えない。
周りの目を気にしながら、人知れず美桜との逢瀬を繰り返していた。
「信士さんは染井と桜花を協力させたいって言ってるでしょう?」
「ああ」
「私もそうなったらいいなぁって思うことがあるの」
「本気か?」
美桜がそんなことを思っていたとは思わなかった。
「だって、染井と桜花が一つになったら無敵だよ!」
「戦力的にはな」
「絶対その方がいいのに……そしたら和くんとも堂々と一緒にいられる」
美桜は俺の肩に頭を寄せる。
「ずっと一緒にいられるのに」
「……」
父にふわっとだけ聞いたことがあるが、桜花の初代組長と染井の初代組長は実の兄弟だったらしい。
元々は一つの組だったが、激しい後継者争いの末に分裂した。
それから満咲家が二組を警察公認の極道と定めるまで、ずっと激しい争いを繰り広げていたらしい。
信士の父である現警視総監は競い合っていた方がより良い結果を生むという考えだった。
組員たちもその傘下も、ずっと互いを目の敵にしている。
何があっても相容れない関係。水と油。
桜花と染井はそういう宿命なのだとすら思っていた。
だけど、美桜が望むのなら。
絶対に有り得ないと思っていた可能性を考えてみても良いのだろうか――。
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