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卒業後、信士は最高学府の国立大学法学部に進んだ。順調に国家公務員試験をパスし、警察官への道を歩んでいくのだろう。
美咲は一流女子大に進学し、勉学に励みながら一家を支える精神的支柱としての役割も果たしている。
染井一家では鬼頭が若頭に就任した。
更に勢いづく染井を牽制すべく、俺も若頭として先頭に立つことが増えた。
個人的にもこの男にだけは負けたくない。
俺も本格的に組の大きな仕事をこなすことになった。
その間も美桜との関係は続いていた。
「和くん、今日スーツなんだ」
「仕事帰りで」
「え〜〜カッコいい〜〜」
「……別に珍しいものでもないだろ」
「そんなことないよ! 好きな人のスーツ姿は特別だから!」
「……そうか」
隙間を見ては逢瀬を繰り返す。
仕事が忙しくなって会える時間は少ないが、数十分でも顔が見られるのなら時間を惜しまなかった。
「いつも悪いな」
「ううん、少しでも会えて嬉しいよ」
美桜には無理をさせている。
俺なんかが相手でなければ、窮屈な思いをさせることもなかった。
それでも美桜が俺の傍にいてくれるのなら、変わりたい。
桜花と染井が一つになる、そんな夢物語を現実にしたいと思うようになっていた。
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