第十一話 桜の邂逅(後) side.和仁

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 翌日、突然拷問部屋の扉が開いた。  顔を真っ赤に腫らした俺に向かって、父は言った。 「和仁、見合いをしろ」 「は……?」 「お前に相応しい相手と結婚するんだ」 「ふざけるなっ!!」 「ふざけているのはお前だ。いい加減目を覚ませ」  美桜以外の女と結婚だと……?  絶対に有り得ない。 「桜花と染井は和議を交わしている。だが満咲の面子を保つためのまやかしにすぎん。奴らと分かり合えることなど一生ないのだ」 「そんなの、わからないだろう……!」 「黙れ! お前に何がわかる!! あの女も染井の女だ。お前を裏切るに決まっているだろう!!」  その時、腹を決めた。  ここにいては俺は一生父の言いなりだ。  美桜と一緒にいられないのなら、こんな家は捨ててやる。  あの頃の俺は若かった。  頭に血がのぼって後先のことを何も考えられていなかった。  ただ美桜と一緒にいたい。共に生きたい。  それしか考えられなかった。 「……美桜か?」 《和くん……》  電話越しの美桜はどんどん弱々しくなっているように聞こえる。  美桜も家の中で軟禁状態にされているそうだ。 「俺と一緒に来てくれないか」 《和くん、でも……》 「頼む、美桜。俺は美桜と一緒にいたい」  こんなに何かを望むのは生まれて初めてだった。 「美桜と一緒にいられるなら、組なんか捨ててやる」 《そんなのダメだよ!》 「俺は組より美桜が大事だ」 《っ、和くん……》  鼻をすする声が聞こえた後、美桜ははっきりと言った。 《わかった。私も和くんと一緒にいたい》 「美桜……!」 《私も和くんのことが一番大事だよ》 「ありがとう……」 《私の方こそ》 「明日、いつもの桜の木の下で落ち合おう」 《うん……!》
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