第十一話 桜の邂逅(後) side.和仁

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 俺は美桜と駆け落ちする約束をした。    本当に自分は愚かだった。  美桜も俺と同じ気持ちだと疑っていなかったし、二人で共にいられることが一番の幸せだと信じていた。  家も何もかも捨ててでも、この恋を貫きたい。  そのことしか頭になかった。  早朝になるのを待って拷問部屋から抜け出した。  美桜と初めて出会った桜の木の下で、美桜を待った。  俺はほとんど何も持っていなかった。かろうじて携帯と財布だけで、他は何もいらなかった。  あとは美桜さえいてくれたらよかった。  だけど、いくら待っても美桜は来なかった。  美桜……一体どうしたんだ? 何かあったのか?  それともやはり俺とは一緒に行けないと思ったのだろうか。  雨が降り出す。ポツポツと雫が落ちるだけだった雨は、あっという間にザーザーと降り注ぐ。  びしょ濡れになりながら、それでも美桜を待ち続けた。 「若!!」  傘を差した峰が息を切らして走ってきた。 「峰……?」 「大変だ!! さっきこの近くで事故があって……!」 「え……」 「染井の娘がトラックに撥ねられた!!」  染井の娘って、まさか……。 「美桜じゃないよな!?」  峰の両肩をガシッと掴んで揺らす。峰が持っていた傘が落ちる。 「美桜は!? 美桜は無事なのか!?」 「……」  目を逸らし、肩を落とす峰。  その表情で察してしまった。 「……っ!!」  嘘、だろ……?
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