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美桜の葬儀が終わった後、俺は帰宅せずにそのまま家を出た。
最早勘当されたも同然だし、今更家には帰れない。
俺が桜花組を捨てようとしたのは事実なのだから。
これからどこに行けばいいのだろう。
美桜を失った今、この先生きていく資格も意味もない。
いっそのこと、美桜の元に……
「――和仁っ!!」
「峰……?」
息を切らしながら俺を追いかけてきた峰は、いきなり俺を殴り飛ばした。
「馬鹿なこと考えるなよ!!」
「っ、何を……」
「何年お前の右腕やってると思ってるんだ? お前の考えてることなんかわかってるんだよ!」
普段は温厚で滅多に声を荒げることはない。
常に冷静な峰がここまで感情を露わにしたのは、後にも先にもこれが初めてだった。
「……頼む、生きてくれ」
「…………っ」
「生きていてくれるだけでいいから……」
「俺に、生きる資格なんて……」
「和仁がいないと俺が困るんだよ!」
「峰……」
代々桜花組の幹部であり、実質No.2として長年桜花組を支えてくれているのが峰家だった。
幼い頃から共に育ち、いつも俺より一歩下がってついてきてくれる。
常に冷静で穏やかだが、内に熱いものを秘めている峰。
昔から峰に助けられてきたと同時に峰の人生を縛り付けているのではないかと気がかりだった。
「俺も行く。気が済むまで二人で遠くに行こう」
「なんでお前まで!」
「吉野和仁の右腕は、俺にしかできないだろう?」
峰はそう言って微笑む。
いつも俺はお前に支えられてばかりだ。
「……好きにしろ」
「ああ、好きにするよ」
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