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「お義父様が癌だったなんて初耳です! 大丈夫なんですか!?」
「ああ、通院治療も終わってピンピンしている。当時は相当騒いだが、今は何事もなかったように元気だよ」
「良かった」
それを聞いてホッと安堵した。
「それでも自分の老い先が長くないとは思っているんだろうな。無理矢理縁談を持ってくるくらいだ」
「……そのことなんですけど、なんでウチだったのでしょうか?」
桜花組の将来を心配して跡取りが欲しいというのはわかるけど、だったらウチじゃなくてもいいのでは?
それこそ雅さんみたいな傘下の組の娘さんとか、もう少し桜花組の事情に詳しい人とか。
元々和仁さんには相応しいお嬢さんとの結婚を、と思っていたみたいだし。
私でなくとも良かったんじゃないかしら?
「あーー……、君には失礼な話かもしれないが、都合が良かったからだろう」
「都合が良い?」
「極道という世界は様々なしがらみが多い。それに巨大な組織であればある程、横の繋がりが大事になる。そのパワーバランスを崩さないために父が考えた条件が三つだ」
「三つですか」
和仁さんはあくまで直接お義父様に聞いたわけでなく、推測であると前置きしてから三つの条件について説明してくれた。
「桜花組と無関係であること、桜花組に不利益とならないこと、そして桜花組に反旗を翻す力がないこと」
「なる、ほど?」
何となくわかるような、わからないような……。
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