第二話 お飾りの妻

15/19

565人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
* * *  ピピッと体温計が鳴り、三十八度と表示されていた。  私はベッドの上ではあ、と溜息をつく。  やってしまった……最近動き回ってたからかしら。  あの後熱があることがわかると、千原さんと笹部さんがすぐに「寝てください!」と部屋に連れて帰ってくれて。  あれよあれよとベッドに寝かされていた。  おでこには冷えピタ、首にはネギを巻かれ(風邪に効くらしい)いつでも水分補給ができるようにと、枕元には二リットルの水とコップが置かれている。  至れり尽せりで有難いけれど、結構落ち込んでいた。  体調だけは崩さないようにと思っていたのに。 「風邪なんて引いてただでさえ迷惑なのに!」  実家で私が風邪を引くと、義母はいつも迷惑そうにしていた。  一応看病してくれたけれど、莉々果が風邪を引いた時とは対応が明らかに違っていた。  だからなるべく迷惑かけまいと、体調管理はとても気を遣っていた。  それなのに、熱を出してしまって……また迷惑だって思われたらどうしよう?  頭痛が酷いし、喉も痛い。  何だか寒気も酷くなってきた。  私は毛布にくるまりながら、寂しさを押し殺す。いつの間にか眠りに落ちていた。  ふと目覚めると、ほかほかという暖かな空気と美味しそうな匂いが漂っていた。 (あれ、この匂いは……) 「ジェシカ!あったかいおかゆを作ったわよ」 「マム……?」  目の前にいたのは、こちらに向かって優しく微笑みかけるマムの姿だった。  エプロンをしておかゆを作ってくれている。  そうだ、風邪を引いた時はいつもマムがおかゆを作ってくれた――。 「起きたか」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

565人が本棚に入れています
本棚に追加