第三話 揺れる想い

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 華道教室からの帰り道、とぼとぼと歩きながら溜息を吐く。  華道ってそういうこともわかっちゃうんだなぁ。  先生は自分の思いを花に託すのだと仰っていた。  だからこそ、私の悩みがありありと表されてしまったのだと思う。  先生は「そんな時もありますよ」と優しく微笑みかけてくれた。  ふと、目の前に仲睦まじく歩いているカップルの姿が目に入る。  手を繋いで歩きながら、彼氏が言ったことに大して彼女が「やめてよー」と言っていた。だけど表情は笑顔で、二人の雰囲気からとても仲が良いことが伝わってくる。  なんだろう、今までは気にならなかったのに、仲の良いカップルや夫婦を見てると羨ましくなる。  私なんて置いてもらえてるだけで有難いのに。  これ以上の贅沢を望むなんて、欲を出しすぎてしまう。  そうだ、久しぶりに買い物でもしよう。  結婚してからどこかに出かけたことなんてなかったし、少し遠出してみるのも悪くないかもしれない。  何より気分転換になるかもしれないと思った。 * * *  翌日、玄関で靴のかかとをトントンする。  久しぶりにワンピースを纏い、お出かけスタイルで出かける。  このワンピース、買ったのは一年前だけど変じゃないかしら。 「出かけるのか?」 「きゃっ!?」  突然声をかけられて思わず大きな声をあげてしまう。 「……そんなに驚かなくても」  声をかけたのは和仁さん。  今日は珍しくオフの日で、浴衣姿なのがカッコいい。和仁さんは普段から浴衣を部屋着にしている。  髪はセットしてなくて前髪を下ろしている姿もカッコいい。  どうして和仁さんって何をしてもカッコいいの?
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