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その時はなるほど、と頷いていただけだったが、後になって質問の意図がわかった。
「……組長には跡取りとなる息子がいて、その息子の嫁を探していたんだ」
「まさか、それって」
「娘を嫁に欲しいって……」
「何よそれ! そんなの無理よ!!」
立ち上がって声をあげたのは、妹の莉々果だった。
莉々果は小柄な子うさぎみたいな愛らしさを持っているけれど、この時は機嫌の悪い猫みたいだった。
「まさかパパ、莉々果に極道の妻になれって言わないわよね!?」
「……」
「あなた、莉々果はまだ大学生よ。これから社会に出て勉強していくのに、結婚なんて! それも極道だなんてあり得ないわ」
「ママの言う通りよ! 莉々果カレシだっているのに! だからもちろん、嫁に出すならお姉ちゃんよね?」
莉々果はチラリと私を見やる。
「お姉ちゃんは今フリーでしょ? 鈍臭くてこの先嫁のもらい手なんているかわからないし、極道でももらわれた方がいいんじゃない?」
「それもそうね。きっとその方がジェシカさんのためにもなるわ」
「よかったわね、お姉ちゃん!」
妹と母は、私の意思など求めていなかった。
求められたことなんて一度もないけれど。
父はブルブル震えながら、私に向かって深々と頭を下げた。
「すまないジェシカ、どうかこの結婚を受けてくれないか……!!」
極道との約束を違うことがあれば、父はどうなるかわからない。受けざるを得なかったのだろう。
「……わかりました。結婚します」
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