第三話 揺れる想い

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「あ、ごめんなさい。ちょっとお買い物に行こうかと」 「車を出そうか?」 「えっ!?いや、大丈夫です!」 「この近くなのか?」 「××のデパートまでですけど……」 「なら車の方が楽だな。鍵を取ってくる」 「待ってください!」  本当に車の鍵を取って来ようとするので、慌てて止めた。  和仁さんったら急にどうしたの?  いくらお休みだからって、わざわざ申し訳ない。 「和仁さん、今日はお休みでしょう?申し訳ないです……!」 「気にするな。久々の休日ですることがないんだ。ついでに着替えてくる」  そのままスタスタと車の鍵を取りに行ってしまった。  しばらくして戻って来た和仁さんは洋服に着替えていた。シャツにジャケットを羽織ったラフなスタイルなのに、何故こんなにも神々しく見えるのだろうか。  スラリとした細身のスラックスは和仁さんの脚の長さを強調している。 「行くか」 「は、はいっ」  どうしよう、今日一日私の心臓保つのかしら?  運転席でシートベルトを絞める和仁さん。私も助手席に座り、シートベルトを絞める。  緊張してさっきから体がカチコチになっている。 「よろしくお願いします……」  買い物に行くと言ったら千原さんが送ってくださると言うから断ったのに、まさか和仁さんに送ってもらうことになるなんて……。  私はチラリと和仁さんに視線をやる。  あの日以来、和仁さんは何事もなかったかのように普通だ。  和仁さんにとっては何でもないことだったのかもしれない。  やっぱり私に同情してくれただけなのかも。  それにしても運転してる和仁さん、カッコ良すぎるわ!  結局ゲンキンな私は和仁さんにキュンキュンしてしまうのだった。
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