第三話 揺れる想い

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 そう言って和仁さんが持ってきたのは、涼しげなシアーカットソーにハイウェストのチェックスカートをドッキングしたワンピースだった。  大人ガーリーな雰囲気で可愛らしく、シルエットもとても綺麗に見える。 「すごくかわいいですね!」 「着てみないか?」 「えっ」 「ご試着可能ですよ」  言われるがまま試着室へ行き、何故かワンピースを試着する流れになっていた。  まさか和仁さんから勧められるなんて思わなかった。しかもこんなに可愛らしいワンピース。  どうしてこれを選んでくれたのかしら?  和仁さんには私がどんな風に映ってるの? 「どう、でしょうか……」  着てみたはいいものの、似合っているのか全然わからない。 「…………」  出てきた私を見て、和仁さんは固まっていた。  こちらを凝視したまま何も言ってくれない。  言葉にできない程似合ってないということ?  いたたまれなくて泣きそうになり、試着室のカーテンを閉めた。 「やっぱり着替えますっ」 「あ、違うんだ」 「わかってます!似合ってないんですよねっ」 「違う、逆だ。ものすごく似合ってる」  恐る恐るカーテンから覗いてみると、和仁さんは若干頬を赤らめていた。 「想像以上に似合っていて……驚いていただけだ」 「……っ」  私は再びカーテンを閉めてしまう。  今度は別の意味で恥ずかしくて。心臓の音が狂ったリズムを刻んでいて、おかしくなりそう。
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