第三話 揺れる想い

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 小説をレジに持っていきながら、ふと思った。  そういえば私、和仁さんのこと何も知らない。極道がどんなことをしてるのかも全く知らない。  お飾り妻は知らなくていいことなのかもしれないけど、ちょっと寂しいような……。  突然、ぐーーーーという音が響く。それもなかなかに大きな虫が鳴いたようで、思わずカアッと顔が熱くなる。 「そういえば昼を食べてないな」 「そうですね……」 「何か食べて帰るか」 「えっ!?あ、はい……」  今更だけど、何だかデートしてるみたい。  いや、これは紛れもなくデートでは?  嬉しい気持ちの反面、やっぱり和仁さんの気持ちがわからなくて戸惑ってしまう。  きっと前よりは私に対して心を開いてくれているのだと思う。  最初から親切にはしてくれていたし、私の身の上に同情してくれているのだとも思う。  だけど、それだけでここまでのことをしてくれるの?  一応妻だから? 「和仁さん」 「なんだ?」 「っ、いえ……何でもないです」  お願い、これ以上優しくしないで。  これ以上優しくしてもらったら、私は――。
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