第四話 抑え切れない恋心 side.和仁

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 書類上の妻になったジェシカは、はっきり言ってかなり変わっていた。  政略結婚の上に極道に身売りされたようなものなのに、少しも臆する様子がなかった。  夫となる男に「愛せない」と言われても笑顔で了承するので、彼女の思惑は何だろうと思い身の上を探らせた。  俺の幼馴染で右腕でもある(みね)が早速調べ上げた調査書を読み上げる。 「葉桜ジェシカ、二十四歳。職業は英会話教室の講師。あの容姿に少し天然な言動、また授業は真面目で特に男子生徒の人気はかなり高い。 アメリカ人とのハーフ。父親は前妻の子としていたが、実際は不倫相手の子だ。彼女が十四歳の時に母親が亡くなっており、父親に引き取られた。 父は本妻との間に娘がいて、本妻とその娘からはかなり嫌な扱いを受けていたらしい。父は不倫相手の子を引き取ることになった負い目から強く言えなかったみたいだな」  なかなか苦労してきたようだ。  見合いに母親が同席しなかったことも頷けた。 「彼女が冷遇されていたことは近所の間でも噂になっていたようだ。まあ一人だけ明らかに容姿が違うし、目立つんだろうな。 実家を早く出たいと思っていたのなら、政略結婚でもいいと思ったのかもしれない」  それにしても極道の妻でもいいのか?よっぽど実家から出たかったのか……。 「リアルシンデレラみたいな子だな。かなり美人だし。まあ、相手は王子じゃなくて極道者だけど」  峰はニヤニヤと面白がっている。 「うるさい。それで?他には何かないのか」 「特にはないな。スリーサイズならわかるけど」 「いらん。特にないならいい」  そもそも素性は父が見合いをやる前から念入りに調べ上げているだろうが。
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