第四話 抑え切れない恋心 side.和仁

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 昼時になったので、デパートのレストランがあるフロアに行き、フロアガイドを見に行った。 「何が食べたい?」 「和仁さんの食べたいものでいいですよ」 「君は食べたいものはないのか」 「私は何でも食べますので」  確かにジェシカは特に好き嫌いはないらしい。  作る料理はどれも旨く、誰に教わったのか俺の好物ばかり並べてくれる。  でも、だからこそ知りたい。 「……知りたいんだ」 「え?」 「君が何が好きなのか」 「私の……?」 「……いや、何でもない。忘れてくれ」  我ながららしくないことを口走ったと思い、視線を逸らした。  するとジェシカは、何か思い切ったようにこう言った。 「あのっ、私おでんが好きなんです」 「おでん?」 「母が作ってくれたり、コンビニで買ってきてくれたり、母と一緒に具を選ぶのが楽しくて……ささやかですけど母との思い出の味なんです」 「そうか、なるほど……だがおでんの店はないな」 「あ、大丈夫です!母が和食好きでしたので、私も和食が好きです」 「そうか。このとんかつ屋は結構美味いぞ」 「とんかつですか!大好きです!」 「じゃあそうしよう。夕飯は家でおでんを作るか」 「いいんですか……?」 「君のお母さんの味には負けるかもしれないが」  今は初夏。おでんの季節ではないが、まあいいだろう。
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