第五話 通じ合う心

1/14

568人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ

第五話 通じ合う心

「……、ん」  私はハッと目を覚ます。キョロキョロと周りを見回そうとして、体の自由が効かないことに気づく。  手足を縛られた状態で椅子に座らされていた。  ここはどこ……?何があったんだっけ?  私は自分の記憶を手繰り寄せる。  和仁さんを待っている間、急に駐車場で男性が倒れて苦しみ出して。  慌てて車から出て駆け寄ったら、急にその人が起き上がって何かを嗅がされて……そのまま意識を失ったんだ。  つまり私、誘拐されたということ……? 「気が付いたか」 「!」  目の前に謎の男が現れる。  見た目は二十代前半くらいで痩せ型の長身。ギョロリとした目の下にクマがあり、顔色はあまり良くない。  黒いスーツを着ていて、シルバーリングがいくつも嵌められていた。口元にはピアスをしている。  何となく雰囲気からこの人も極道なのだろうか。 「お前が吉野和仁の女だな」 「……」 「外人の嫁をもらっていたとは生意気だ」  一応国籍は日本人なんですけど。  そんなことを言っても仕方ないが、内心では少しムッとした。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

568人が本棚に入れています
本棚に追加