第五話 通じ合う心

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 目を瞑った数秒の間に形勢逆転していて、私は何が起きているのか全く理解できなかった。  銃口を向けたまま、冷徹な瞳で男を見下ろす和仁さん。 「う、撃てよ!」  尻餅をつきながら、男は喚いた。その姿はあまりにも情けなく滑稽だった。 「殺せよ!!この人殺しがっ!!」  和仁さんは無言で銃口を突き付けている。和仁さんの指が引き金にかかるのが見えた。  ダメ、やめて和仁さん……っ!!  私は叫びたかったけど、声が出ない。  パァン!という銃声が響く。  銃弾は男の頬から数ミリを掠めた。男の頬からツー、と血が滴る。 「……失せろ」 「ヒィ……っ!!」  ドスの効いた低い声で吐き捨てる。完全に圧倒された男は戦意喪失し、その場に崩れ落ちた。  和仁さんは銃を下ろし、駆け寄って私を縛っていた縄を解いてくれた。 「大丈夫か?」 「……っ!」  反射的にビクッと体を震わせてしまった。 「俺が怖いか?」  あ、違う。そういうわけじゃないのに……。 「あの、」 「巻き込んで悪かった」  先程までの獣のような激しいオーラは形をひそめ、和仁さんは私に向かって頭を下げた。 「もう君には近づかない」 「……!」  違うのに。助けに来てくれて嬉しかった。和仁さんが来てくれなければ、死ぬかと思った。  だから、そんなに寂しいこと言わないで――……。
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