1328人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
一応体裁を保つため、私は形だけのお見合いをすることになった。表向きはお見合い結婚にするため。
母の形見である着物をまとい、父とともに格式のある料亭に訪れた。
義母は同席することを拒んだ。まあ無理もない。
極道と相対なんてしたくないだろうし、ブロンドの髪にグレーの瞳を持つ見るからに外人の私と純日本人の義母。
しかも父が不倫した末の娘だし、母親として出席するなど義母のプライドが許すはずがない。
「お待たせして申し訳ない」
先に来て待っていた私たちの前に現れたのは、和服を着た中年男性だった。
極道の組長さんというからどんな恐ろしい人が来るのだろうと思っていたけど、着物は立派だし白髪混じりの髪は綺麗に整えられているし、清潔感が感じられる。
気品があるとさえ思った。
「桜花組組長、吉野正仁と申す。こちらは妻の紗代子」
紹介された奥さんは恭しくお辞儀した。
やっぱり極道の怖さみたいなものはなく、和服の似合う慎ましやかな女性だった。
「そして、息子の和仁だ」
彼を見た瞬間、電撃が走ったかと思った。
怒ったような仏頂面に鋭い眼。
初対面から全く歓迎されていないのは察したけど、それでも私は彼から目が離せなかった。
だって、
最初のコメントを投稿しよう!