第一話 極道の妻

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* * *  一応体裁を保つため、私は形だけのお見合いをすることになった。表向きはお見合い結婚にするため。  母の形見である着物をまとい、父とともに格式のある料亭に訪れた。  義母は同席することを拒んだ。まあ無理もない。  極道と相対なんてしたくないだろうし、ブロンドの髪にグレーの瞳を持つ見るからに外人の私と純日本人の義母。  しかも父が不倫した末の娘だし、母親として出席するなど義母のプライドが許すはずがない。 「お待たせして申し訳ない」  先に来て待っていた私たちの前に現れたのは、和服を着た中年男性だった。  極道の組長さんというから、どんな恐ろしい人が来るのだろうと思っていたけど、着物は立派だし白髪混じりの髪は綺麗に整えられているし、清潔感が感じられる。  気品があるとさえ思った。 「桜花組組長、吉野(よしの)正仁(まさひと)と申す。こちらは妻の紗代子(さよこ)」  紹介された奥さんは恭しくお辞儀した。  やっぱり極道の怖さみたいなものはなく、和服の似合う慎ましやかな女性だった。 「そして、息子の和仁(かずひと)だ」  彼を見た瞬間、電撃が走ったかと思った。  怒ったような仏頂面に鋭い眼。  初対面から全く歓迎されていないのは察したけど、それでも私は彼から目が離せなかった。  だって、
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