第五話 通じ合う心

6/14

568人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
 何だかわからないけれど、この二人が対峙しているだけで強いプレッシャーを感じる。  間に入ろうものなら、火花で焼き切られてしまいそうだ。 「今回の件はウチの者の不始末だ。ここは俺に任せてもらおうか」 「後処理は任せる」  和仁さんはそう言うと、峰さんのほうを振り向く。 「峰、ジェシカのことを頼む」 「わかった。行きましょう、姐さん」 「はい……」  峰さんに付き添われ、その場から立ち去ることに。  不安そうに和仁さんの方を振り返いたが、和仁さんがこちらを向くことはなかった。 * * *  私は峰さんの運転する車に乗り込んだ。  後ろの席に座ってりながら、おずおずと峰さんに尋ねる。 「あの、和仁さんは大丈夫なんですか……?」 「大丈夫です。姐さんこそ怖い思いをされたでしょう?我々がついていながら申し訳ございません」 「いえ、そんなこと!和仁さんが来てくださいましたから」 「若は随分あなたのことを心配しておられましたよ。あんなに取り乱す若は久しぶりに見ました」  和仁さんが……?  心配してくれていたのだと思うと、きゅうっと胸が締め付けられる。 「あの、さっきの人は……?」 「あれは桜花組と双璧をなすと言われる染井一家の若頭・染井(そめい)義徳(よしのり)です」 「双璧?」 「はい、桜花と染井は関東極道の中でも強い勢力を持ち、互いに警察から認められた公認の組織でありますが、古くから敵対関係にあります。まあ簡単に言えば商売仇なんです」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

568人が本棚に入れています
本棚に追加