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第六話 遅れてきた蜜月
「今日は他の支部との会合で遅くなる」
「はい、お気をつけて」
「夕食は食べてくるから」
「わかりました」
「ジェシカ、」
「!」
ちゅっと軽く触れるだけのキスをされる。
「行ってくる」
「……行ってらっしゃい」
ドアが閉まり、和仁さんを見送る。
しばらく玄関でぼうっとしてしまうくらい、キスの余韻に浸ってしまった。
一夜を共にして以来、私たちの関係は劇的に変わった。
和仁さんは毎日優しいし、必ず予定を教えてくれるようになったし、夜ごとに私を求めてくれる。
何より意外なのが和仁さんって意外とスキンシップが多いこと。キスもハグも毎日してくれるし。
「はぁ……これが新婚生活……」
遅れてきた本当の新婚生活は毎日が幸せでいっぱいだった。
私こんなに幸せでいいのかしら?思わず小躍りしちゃいそうだわ。
床にワイパーを掛けながら、本当に踊り出してしまいそうになる。
通りすがる組員たちは私を見ては、不思議そうに小首を傾げていた。
誘拐事件は怖かったし、まだ気がかりなこともあるけれど――私は和仁さんを信じてる。
いつか話してくれるかもしれないし、その時まで待とうと思った。
私は何があっても和仁さんを愛しているから。
「ただいま」
「お帰りなさい!」
和仁さんが帰宅したのは二十二時頃だった。
和仁さんはだいぶ疲れたような顔をしていた。
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