第六話 遅れてきた蜜月

3/12
前へ
/85ページ
次へ
 きっと今が一番幸せだ。今まで生きていた中で一番幸せ。 「……ジェシカ、変に誤解させたくないから言っておく」 「何でしょう?」 「桜花組の傘下に浅雛(あさひな)組という組がいるんだが……」  浅雛組は傘下の中でも大きな組で、桜花組にとってはなくてはならない存在なのだという。  浅雛組の先代組長の時代から親交があり、現組長とお義父さまも仲が良いのだそう。 「浅雛組の組長には娘がいてな。昔からの顔見知りではあるんだが、俺が結婚したことを知ったら妻に会わせろと言ってきて」 「あら、そうなのですか」 「あまり君を他のやつらに見せたくないんだが、絶対に会うと聞かなくて」  和仁さんはややげんなりした表情をしている。 「明日うちに来ると言っているんだ。悪いが会ってやってくれないか」 「わかりました」  傘下の組の組長令嬢との挨拶。これが桜花組次期組長の妻としての初仕事になる。  お飾りの妻ではなくなったのだから、しっかり務めを果たさなければならない。 「頑張りますね!」 「そんなに気負わなくていい。話し相手になるだけでいいから。悪いな、あまり君に負担はかけたくないんだが……」 「負担だなんて、嬉しいですよ。妻として認められたみたいで」 「認めるも何もない、俺の妻は君だけだ」  そう言うと和仁さんはヒョイっと私を抱き上げた。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

583人が本棚に入れています
本棚に追加