第六話 遅れてきた蜜月

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 結婚したばかりの頃は想像もしてなかった和仁さんの甘い一面。普段のクールさとのギャップが激しい。  でもいちいちキュンとしてしまうゲンキンな私。 「ジェシカ……」  くいっと顎を向けられ、唇との距離が近くなる。 「あ……」  唇まであと数ミリというところで―― 「兄貴〜〜〜〜〜!!!!」  外から大声が聞こえた。  恐らくこれは、千原さんの声だ。  離れの奥からドタドタという騒がしい足音が聞こえる。  和仁さんは大きな溜息を吐き、明らかに不機嫌そうな表情に変わった。  いつもの和仁さんに戻った。 「兄貴ーー!!大変っす!!」 「千原……指詰めたいか?」 「えっ、嫌っす!そんなことより大変なんすよ!浅雛嬢が来ました!!」  それを聞くと和仁さんはますます不機嫌そうになった。 「まだ朝の九時だぞ……」 「でも既に居間でお待ちしてるっす!」 「はああ……」  和仁さんはげんなりしながら肩を落とす。  どうやら浅雛組のお嬢様がお見えになったみたいだ。  一体どんな方なのかしら?  私は少し緊張と好奇心が入り混じった気持ちで、和仁さんと共に居間に向かう。 「あ、浅雛嬢。お待たせしました、兄貴と姐さんをお連れしたっす」  千原さんが声をかけると、居間にいた黒髪の女性がこちらを振り返る。  まるでスローモーションを見ているような感覚だった。  癖一つないキューティクルな長い黒髪を靡かせ、切れ長の凛々しく強い瞳が私たちを捉える。
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