第六話 遅れてきた蜜月

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 陶器のような白い肌に、形の良い整った眉は存在感を放っている。  濃くはっきりとしたエキゾチックなメイク、スーパーモデルのような抜群のスタイル。  正にアジアンビューティーな長身美女に思わず圧倒されてしまう。 「(みやび)……本当に来たのか」 「当たり前でしょ」 「はあ……ジェシカ、これが桜花組の傘下・浅雛組組長の娘、雅だ」 「浅雛(あさひな)(みやび)よ」 「は、初めまして。吉野ジェシカと申します」  ぺこりと頭を下げるけど、雅さんは無反応。  私のことを頭から爪先まで見回している。  何だかすごくいたたまれない……。 「……あなた、日本語お上手ね」 「えっ」 「ジェシカは日本人だ」 「そうなの?」 「はい、父が日本人で……」 「そうなのね」  やっぱり雅さんはジロジロと私を見つめている。 「それより雅、何なんだ朝から」 「決まってるでしょ。和仁の妻に相応しいのか見極めにきたのよ」  うう、やっぱり私って側から見たら不釣り合いなんだ……。 「お前に見極めてもらう必要なんかない」 「あるわよ!どーせ政略結婚なんでしょ?大層良いところのお嬢さんなんでしょうねっ」  いやそんなことは全くない。  父は経営難に陥っていた会社の社長だし、そもそも私は不倫相手の娘ということで贅沢なんてさせてもらえていなかった。 「桜花組の組長となる人の妻が、普通の女だなんて有り得ないわ」  それが有り得てしまっているので、どう答えていいものかと悩んでしまう。
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