第六話 遅れてきた蜜月

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「ジェシカさんといったわね。二人きりで話をさせてもらえるかしら?」 「は、はあ……」 「おい、雅。いい加減にしないか」 「大丈夫です、和仁さん。お話するだけですから」 「ジェシカ……」  和仁さんは納得いかない様子で難しい顔をしていたが、雅さんに向かって何かを囁いた。  何だかこの二人、すごく仲が良いんだろうなぁと思った。  私と雅さんは別の客間に移動した。  雅さんは慣れている様子で、客間の場所も把握しているようだ。  私なんてまだ迷いそうになってしまうのに。  それほど何度も出入りしているということなのよね……。 「あの雅さん、何か飲まれますか?」 「いえ、結構よ」  き、気まずい……。 「単刀直入に聞くわ。あなた、和仁のことはどう思ってるの?」    雅さんはクールでエキゾチックな瞳をじっと私に向ける。嘘や誤魔化しは許さない、と言いたげに。 「愛しています」 「政略結婚だったのに?」 「結婚のきっかけはそうでしたけど、今は違います。今は心が通じ合っていると思ってます」  雅さんの目を見てはっきりと答える。
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